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マジックミラー : デイリーヘルスケアをめざすロボット技術

東京大学 IRT 研究機構(機構長:下山勲)はこのたび、ロボットの高度な運動解析、力学計算、最適化技術をリアルタイ ム化させることによって、人の動作計測からリアルタイムに、(1)筋肉の活動を可視化する技術 と、(2)人の体の各部位の質量分布を可視化する技術、を研究開発しました。さらに、これらを統合した「マジックミラー」と呼ぶアプリケーションを開発しました。
鏡の前で運動フォームを確認するかのように、カメラ内蔵の大型フラットテレビ(マジックミラー) の前で運動すると、「魔法の鏡」に自分の姿を透かして見るかのようにリアルタイムで筋肉の活動 の様子を見ることがでるようになります。毎日、筋肉の使い方の変化が起きているかどうか、特定 の筋肉や全ての筋肉を使う運動ができているかどうかなどの確認をすることができます。また、腕、 胸、腹、腿など身体の各部の質量分布を、同じようにマジックミラーの前で運動することによって 計測することができます。体型の変化や、部位別の体重の変化を健康管理の情報として使うことができます。
これによって、家庭の居間で手軽にデイリーヘルスケアを行えるほか、リハビリテーションセンタ ー、スポーツジムなどでのトレーニング効果の簡便な評価、医療機関などでの医療効果の診断を支 援する基盤技術の一つとなります。また介護の環境でこれらの情報を提供することで、介護や介護 教育を支援することができます。
このリアルタイム技術は、ロボットが人を観察する目として将来のロボットに実装され、人の行動の理解や人に手を差し伸べるきっかけを見つける知能的人支援技術へも展開されます。

詳細解説資料

1. 開発技術の説明「リアルタイム筋張力計算技術」

人間の前身の筋の活動をリアルタイムで推定、可視化する際の技術課題として、計算コストの問題 が挙げられる。IRT 制御システム部門の中村仁彦教授の研究室では、ロボティクスの運動学や動力 学の計算アルゴリズムの研究を、人体の運動解析と深部感覚(筋や腱の張力やそれを支配する神経 の活動)の推定に応用する研究を行っている。同研究室では、全身で155自由度の骨格と1190本のワイヤでモデル化した筋、腱、靭帯、軟骨からなるモデルを用いて、逆運動学、逆動力学、最適 化計算をオフラインで行い約 10秒程度の計測結果を数十分後に可視化して提示できる技術を開発し、すでにプロのボクサーのトレーニングの解析などへの試験的な利用を行ってきている。
今回開発した技術は上記技術をリアルタイム化し、そのデイリーヘルスケアへの応用を示したものである。モデルの低次元化(骨格62自由度、筋・腱・靭帯・軟骨308本)、逆運動学のマルチスレッド化、筋のグルーピングと動特性モデルを用いた筋張力推定、SR-Inverseを用いた安定かつ高 速な最適化計算により、1 フレーム辺りの計算時間を約0.016秒まで短縮し(従来技術では約0.170秒)、1秒当たり16フレームの可視化を可能とした。

図1 筋張力をリアルタイムでテレビ画面に可視化したコマ撮の図 (左:実際のビデオ画像にオーバーレイ表示したもの) (右:筋張力のみを表示したもの)

2. 開発技術の説明「力学パラメータの推定とその評価のリアルタイム可視化技術」

健康管理には一般に体重が用いられてきた。最近では体脂肪率を計測する体重計も広く使われてい る。今回開発した技術は、人間の運動をカメラで見て床反力計で計測することで、全身を16個のセグメントに分けた各セグメントの質量分布(具体的には、質量、質量中心、慣性モーメント)を 推定するものである。推定をリアルタイム化し、その推定精度の評価をリアルタイムで可視化する ことで、からだのどの部位の推定が不十分で、もっとその部位を運動させないといけないなどの情 報を人に提示することで、インターラクティブに推定精度を上げることができ、楽しみながらの健康管理ができるアプリケーションである、腕、胸、腹、腿など身体の各部の質量分布を計測する ことができるため、体型の変化や、部位別の体重の変化を健康管理の情報として使うことができる。

図2 データが蓄積されて推定精度が上がるに従ってセグメントの赤から緑に変わる。赤いセグメントを中心に運動することで、推定をインターラクティブに行うことができる。

図3 計測と計算の原理

3. その他関連情報・関係する論文発表予定:

村井 昭彦,黒崎 浩介,山根 克,中村 仁彦, "モーションキャプチャ,EMG,筋の動特性モデルに基づく筋張力のリアルタイム推定及び可視化",第14回ロボテシクスシンポジア,北海道,2009年03月16日.
(その他に投稿中2件)
・直接する関連特許出願: 特願 2009-37252 平成21年2月20日 筋張力推定法及び身体内部の活動情報提示法 PTC/JP2009/5288 平成21年2月19日 力学パラメータの同定法