目的

心音センサ

従来、心筋梗塞のリスクマーカである心音のIII(さん)音と呼ばれる音は、熟練の医師が聴診器を使って診断していた。本研究では、この心音を日常的にモニタリングするために、小型で常時装着しても体の負担が少ないMEMS心音センサを実現した。
本センサは、厚さ300nmのシリコンのカンチレバー(片持ち梁)とキャビティで構成される。シリコンカンチレバーの表面には不純物拡散によりピエゾ抵抗層が形成されており、振動などでカンチレバーが歪んだ際には電気抵抗値が変化する。シリコンカンチレバーと皮膚の間にキャビティを設け、シリコンオイルで満たすことにより皮膚とシリコンカンチレバーとのインピーダンス整合をとり音響信号の減衰を防いでいる。
製作したMEMS心音センサの心音計測能力の評価を行うため、市販の電子聴診器の聴診データとの比較を行った。計測データを周波数解析した結果、MEMS心音センサが電子聴診器と同等に心音を計測可能であることを確認した。また医師に実際にMEMS心音センサを使用してもらい、聴診器での診断と比較して遜色なく使用可能であることを確認してもらった。
本研究により、常時装着し日常生活を送ることが可能な心音計測システムの実現が見込まれ、心不全や脳卒中などの循環器系の疾患を未然に防ぐ医療への寄与が期待される。